サイド・ロード

相も変わらずしみったれ

マッサージに行った 〜15年の決別〜

 いつから猫背だったろうか、と思った。

 ゲームを始めだしたのはおおまかに3歳のころ。PS2でブラウン管の前に座ってチョロQサルゲッチュなどを遊んでいた記憶がある。アニメも見た。シャーマンキングを観始めたのは6歳のころで、「宿題が終わらないとテレビを見てはいけない」というきまりを前に泣きながら漢字練習のマス目を埋めていたことをよく覚えている。その頃からもうすでに床を机代わりにして、正座から上体をじゃばらのように折るかたちでまるまっていた

 話は飛んで現在は18歳になった。選挙権を獲得したが投票はしていなかった。あんまわかんなかったからだ。それに、子供という盾を持ってもう少し甘えていたいというところも正直言ってあったと思う。

 昔から趣味の根本は特に変わってはいないが、本を読むときは上体をぐっと下向きに折って読むことが癖になったし、床を机代わりに絵を描くことも多かった。そして、机だろうと床だろうと構わずに、絵を描くときには「右腕二の腕を左手で掴みながら描く」というよくわからない癖までできてしまった。

 これに関しては別に僕自身特段気にしてはいなかったのだが、今回マッサージに行こうと思った理由として、猫背というのが大半を占めていることは確かである。

 まず、これは学校で言われた話なのだが、どうも僕の立ち姿は前傾しているということを言われた。

「たとえば普通の人がこうとして、山吹は……こう。」

 それがもう完全に会釈の姿勢なのである。そしてその姿勢を同グループの人間にも見せていたものだから、一人くらいは「いやそこまでじゃないでしょ」みたいなことを言うかと思ったのだが、誰も言わないので、おそらく本当にこの姿勢なのだろうと思うと悲しくなった。

 そしてもう一つあるとすれば、それは絵。僕の絵はアイドルしか描いていないのにもかかわらず、外側に弾けるように踊っているような絵が少なく、そして全体的に暗くて内向的なものばかりで、さらに特に意識せずに描いた場合には必ず「猫背」になってしまうのだ。

 別にこれのすべての理由を姿勢が原因と決めつけるわけではないのだけれど、しかし一因としてありうる、と思ったのである。

 そして、思ったので決行した。マッサージ店に予約を入れて、ちょっとごはんを食べてからスーパーに寄った。柱のところどころに鏡面があるので、そこで自分の姿勢を見る。見慣れている猫背がそこにあった。僕はこの姿に納得して、特に何か買うでもなくスーパーを出てマッサージ店に向かった。

 

 マッサージ店の内部はいくつものベッドの上に何人もの人間が寝そべっていて、肘で押されていたり手のひらで押されていたりバチバチ叩かれていたりと、初見での感想はとても恐ろしい場所というわけだが、震える手とボソボソと弱気な声で名前を告げ、紙を渡されて見せられたあとに寝転ばされた。

「本日はどのへんが疲れてますか?」

「は……多分……肩だと思うんですけど……」

 全身をすりこぎに潰されるごまのようにごりごりとやられた。肩を潰されるたびに「けっこうこってますね」と言われ、「右のほうがこってますね」とも言われた。やっぱり利き手は疲れているのだなぁ、と思った。

 老廃物を排出するためにも、水を多く採ってください、と言われた。なんだかその言葉が自分の中のふさぎこんでいたものが通い始めるような気がして嬉しかった。

 数千円を払って自転車にまたがった。その時点では特に変わったこともなかったので先程のスーパーに向かった。

 

 スーパーを闊歩して思ったことがあった。棚の位置がおかしい。完全に別の視点からの世界になってしまって驚いた。改めて柱の鏡に自分を映すと、逆方向に屈折していた。僕は笑った。中途半端に自分が両極端なところに。どうやら曲がってないと気がすまないらしい。

 マーブルとコーヒービートで悩んでコーヒービートを買い、コーラとポテチも買った。いままでだったらおそらくマーブルを買っていただろう。3粒ほどを放り込んで歯ですりつぶす。甘いうちに広がる苦味にちょっとウキウキした。