まちばり

つくりかけのおもいでのパッチワーク

衣服購入録 破滅編 (終)

 ゆらゆらと揺れる炎は赤かった。今は昔。府立体育館で「銃をとって叫べ 誰に俺たちが裁けるのかと」とか歌唱した人がおったそうな。

 なるほど、革命である。服装からの開放、というような話をして、世界をどうにかこうにか改変、やばい思想家とかが死んだ理由っていうのは戦争とか革命なのだから、そのへんを起こせばなんらかの世界改変は望めるだろう。

 やばいやつらと、ついでにアルマーニとかの首とかのため、私はいま、革命家として立ち上がったのである。服に高貴的な意味を持たせた者たちに裁きを。

 しかし、どうやればいいのだろう。革命つったって、全裸で絶叫などとしていたら、気が狂っている、などと思われて射殺、結局なんのメッセージもなく犬死、ということになってしまう。

 かといって、パンツさえも履いていては、それは私が忌み嫌った服装の呪縛であり、どうにもこうにもうまくいかない。最初に述べたように、衣食住が揃っていないと人間は生活することはできないのであって、どれか一つでも欠けてしまうと死んでしまう。

 私自身が社会的に抹殺されるのもなんだかちょっとつらい。

 そこで私は、友人に全てを託すことにしたのである。文明の利器というものはすばらしく、いまや電話、通話などということをせずとも、LINEなるサービスを活用すれば、チャットすることもでき、さらに送った瞬間に相手先にも文面が表示されるのである。これのせいで伝書鳩はだいたい全員死んだのである。

 私は友人に、「全裸で服からの開放について、演説してほしい」と頼むことにした。成功の秘訣その1。大切なところは他人任せにしない、ということで、ちゃんとスピーチの台本までを送った。

 返事は一向に来なかった。所詮怯えをなした腑抜けであったのだ。

 ARMYのTシャツでつったってると蚊にめっちゃ刺されるので、去ろう、とあらゆるところをボリボリ掻きながら自転車に戻ると、そういえば自決用に豆腐を買っておいたのがあった。

 なるほど、自決か。作家、三島由紀夫は、日本という国に憂いて、このままじゃ、やばいんだぞというようなことを言って死んだ。結局それによって日本は変わったかといえば変わらなかったのだが、いややっぱ、三島さんすげえじゃん、って今でもなってるのは、若干でもそういった行動が伴っていたからなのだろう。

 しかし、全裸で絶叫した狂人が豆腐の角に頭をぶつけて自決したところで、それは前衛映画、寺山修司の実験映像の枠を出ないような気がしなくもない。

 と、自転車を走らせながら考えると、浮かぶわ浮かぶわ、また革命、そして映像、というワードに沿って一つ、手段が浮かんだのである。

 YouTuberである。

 世間を騒がせた少年革命家、という存在もあるのだから、「はいさいまいどぉ!」って言って、ハダカで飯のレビューなどしたら、同じ意思を持った人たちと交流し、全裸でデモ、締めに集団自決、となったら政府もちょっとやばいな、と思わざるを得ない。アルマーニなどは即刻輸入停止を逃れられないだろう。するとどうなるか。老人が金を余らせ、自己顕示欲を満たせないストレスと白日のもとに晒された自らを彩ったアルマーニなどのないくちゃくちゃのビニールみたいな皮膚の情けなさと孤独から酒とタバコとポケモンGOに逃げ、ばんばん死んで年金とかいうやばいシステムがいらなくなり、この世界が改善へと導かれるのである。ブラボウ、ブラボウ。

 いいね、YouTuber、ひゃっほう。試しに「はいさいまいどぉ!」と叫んでみたが、なるほどなかなかいい感じである。私はまるで、体積の測り方を発見したアルキメデスのように「はいさいまいどぉ!」と叫び、けけけけけ、と笑いながら京都市内を爆走したのである。

 しかし、ここで最大の問題が生じた。もはや世界でさえも衣食住の3つに完全に毒されていて、すっぽんぽんでも大丈夫なのはもうアフリカの奥のほうとかそんくらいしかないので、基本的にすっぽんぽんではYouTuberにはなることができないのだ。

 ふざけるな。と叫びながらポルノサイトにそのようなものを掲載したところでやばい人がやばい目的でしか使わない上に、ブルーバック映像をいっぱい作られてなんかたいへんなことになりそうだ。

 私は、革命を声高に叫んだ結果、この狭い家の中からさえも、出ることができなくなった。

 寺山修司、書を捨てよ町に出よう、のラストの語りで、強姦魔が最後に干してある白いシャツを着て面接に行く予定があったことを思い出すが、私にはもう、そのような白いシャツもないのである。

 あるのは手元の白い豆腐のみだった。

 強姦魔には帰る家がないならば、革命家には、もはや思想しかないのだ。

 ただ一切にすぎてゆくものに対して抗うただ一つの思想、それだけしかないのだ。

 前しか向けない寂しい革命家には、切り立った断絶の破滅しか残されていない。

 私は、思い切り頭に豆腐の角を振りおろした。そして私は、もう二度と目覚めることはなかったのだ。

 

―終―